気を付けたい子どもの肥満
突然ですが、皆さんは小児の肥満は増えていると思いますか?減っていると思いますか?
小さい子はたくさん食べて大きくなるのが仕事ですが、過度な栄養摂取は肥満の原因となります。そして、生活習慣病は決して中高年のオジサンの病気ではなく、子どもにもしっかりと影響を及ぼします。
今回は子どもの肥満についてみていきましょう。
子どもの身長と体重の推移
さて、学校保健統計調査によると、子どもの身長は昭和23年からグングンと平均値が上昇していましたが、平成6-13年をピークにその後は横ばいとなっています。
これは主に栄養状態の改善によるものと考えられます。戦時中に比べると現代の子どもたちは成長に必要な栄養が十分に取れているということです。
単純に裕福になっただけでなく、学校給食が始まったことが子どもの栄養状態を改善したとする意見もあります。
ただし、栄養状態が必要量に達すれば、その後の身長の伸びは遺伝的な部分も絡んできますから、現在小児の身長は高止まりしています。
体重の推移を見てみましょう。
平成10年-18年をピークにその後減少傾向となっています。欧米的な食文化の導入で十分どころか過度な栄養摂取となってしまい、肥満が増えました。近年は「子どもの肥満」について問題意識が広がり、身体測定で肥満度が高いと判断された子どもが医療機関を勧められるようになったりした影響で肥満は減少傾向となっています。
面白いのが次のグラフです。昔に比べ、成長期が早くなっています。「最近の子どもは発育がいいわねぇ」というのはあながち間違ってなさそうです。
しかし、これはいいことばかりではありません。成長期の前倒しは性徴期の前倒しにつながります。第二次性徴を迎えると身長の伸びは終了となるので、成長期は昔のように遅いのが理想です。成長期が遅い男の子の方が女の子よりも最終的に身長が大きくなるのはこのためです。
今後小児の肥満が減ることでもう一段平均身長が伸びるかもしれません。
肥満とは
そもそも、肥満とそうでない子供はどう見分けるのでしょうか。
よく使われる指標にBMIがありますね。子どもはカウプ指数と言われるものを用いますが、実際はあまりあてにしていません。
小児肥満の診断には「肥満度」と呼ばれる指標を用います。
肥満度=(実測体重-標準体重) / 標準体重×100 (%)
幼児では
肥満度15%以上・・・太りぎみ
20%以上・・・やや太りすぎ
30%以上・・・太りすぎ
学童以降は
肥満度20%以上・・・軽度肥満
30%以上・・・中等度肥満
50%以上・・・高度肥満 とされます。
これに加え、小児の身長、体重を評価する上で最も欠かせないのが成長曲線です。
肥満や低身長で病院を受診される際には、なるべく小さい頃からの身体測定の結果を持参してもらうと、原因究明に役立つばかりでなく、病的な肥満の原因の見落としも減りとても助かります。
小児肥満は何が問題なの?
子どもは少し太っているくらいがちょうどいいでしょ!ダイエットなんてもってのほか!と思われる方もいるのではないでしょうか。
もちろん過度なダイエットは子どもの成長に悪影響ですから絶対にやってはいけません。しかし、先ほども言ったように肥満は成長期を早めてしまい、最終的な身長の伸びを阻害してしまいます。
…かくいう私も小学生の時に太っており、6年生まで身長がガンガン伸びた結果(小6の4月で170cm over)、中学生以降で全く伸びなかった経緯があります。( ;∀;)
困るのは身長の伸びだけではありません。
子どもの時に肥満になると、大人になってから痩せること自体が難しくなります。
幼児期の肥満の25%、学童期前期の肥満の40%、思春期肥満の70~80%が成人肥満につながるとされています。
思春期になると体格が形成されてしまったり、生活習慣が形成されたりするためで、子どもの肥満はなるべく早期に解決することが必要となります。
さらに面白いデータがNEJMから出されており、思春期の肥満と成人期の肥満で心筋梗塞・糖尿病のリスクを比較した論文があります。
当然、思春期も肥満で成人期も肥満の場合が最もハイリスクですが、次にハイリスクなのが、「子どもの時に肥満で、成人になってからは普通」の人なのです。
つまり成人になってから痩せる、では遅いのです。(そもそも思春期肥満はほとんど痩せられない…っ!!)
次いで子どもの時は正常で大人になってから太った群
最も低リスクなのはもちろん、子どもの時から大人まで正常体型の群でした。
肥満の原因
子どもの肥満の原因として最も多いものは単純性肥満と言われています。
これは摂取カロリー>消費カロリーによる単純な肥満で、糖質、脂質の多い食事、ジュース、おやつの過剰摂取や運動不足が原因となります。
食事の欧米化や、コンビニや自動販売機でおやつや炭酸飲料が簡単に手に入るようになったこと、ゲームやスマホなど外に出ない&動かない娯楽が増えたことが一因とされています。
一方、病気が隠れていて肥満になることを症候性肥満といいます。
クッシング症候群、偽性副甲状腺機能低下症などの内分泌疾患のほか、虐待や自閉症スペクトラム、精神疾患などが原因となることもあります。
小児科医は症候性肥満を見逃さないようにしなくてはなりません。
成長曲線を用い、ある一定の時期から肥満が進行していないか注意が必要です。
肥満による病気
病気が原因で肥満になることは稀ですが、肥満が原因で病気になることは多くあります。
近年子どもの生活習慣病が増加しており、決して大人だけの病気ではなくなってきています。
肥満(腹囲)に加え、脂質異常、高血圧、高血糖のいずれか2項目以上満たすと小児メタボリックシンドロームの診断となりますが、
なんと小児の肥満児10人のうち4人は小児メタボリックシンドロームに該当すると言われます。
子どもは太っていても大丈夫!ではないことが分かりますね。子どもでも肥満になれば病気になります。
また、肥満児はアトピーや食物アレルギーに罹患するリスクが高いことや、太っていることで学校でいじめにあったり、自尊心の低下につながるなど、病気の面以外でも様々な影響を及ぼします。
そんな小児の肥満、どのように解決すればよいでしょう。
後半は子どもの肥満の治療についてまとめます。