子どもは誤飲をするものです。
大人から見るとなぜこんなものを飲み込むのか?と疑問に思いますが、赤ちゃんは初めて見たもの、触ったものが安全かどうかを口で確かめると言われています。おもちゃを舐めているのもこのせいですね。
さて、舐めるだけならまだしも、もし食物以外のものを飲み込んでしまったら…
今日は誤飲についてのお話です。
誤飲の危険は日々増えていく?!
子どもはどんなものでも口に入れます。絶対おいしくないでしょ!ってものも口に入れます。
誤飲は小児科医としても対応に苦慮する疾患です。新しい商品が発売されるごとに、新薬が開発されるごとに、新しい誤飲の症例が出てきます。
例えば、昔はボタン電池なんてありませんでした。ボタン電池が開発されたから「ボタン電池の誤飲」という症例ができました。しかも、リチウム電池が開発され、アルカリ電池からものが変わるとまた新しい誤飲の症例が出てきます。同じボタン電池でもリチウム電池とアルカリ電池の対応は全然違います。
こちらも日々情報をアップロードしていますが、あなたの子どもが飲み込んだその物が、実は日本で初めての誤飲症例になる可能性があるのです。これはその他の疾患ではほとんど見られない現象です。特に新薬の誤飲は困ります。症例報告がほとんどないこともあり、治療法がわからないこともあります。
子どもの誤飲は予防に越したことはないな。と痛感しています。
その全てを見ていくときりがないので、今回は比較的よく起こりそうな誤飲についてです。
異物誤飲については日本小児科学会のHPで傷害速報として事故の報告がされています。異物誤飲だけではなく、重症度の高い子どもの事故についても報告されていますので、興味のある方はご一読ください。
①やっぱり多い、タバコ誤飲
小児の誤飲で最も多いのがタバコ誤飲です。最近はタバコを吸う人が少なくなってきたとはいえ、まだまだ病院に多くのタバコ誤飲の子どもが受診します。
やはり親が口に入れている物ということも理由の一つなのでしょうか?気が付いたらタバコを口に入れてモグモグしていた!というパターンが多いです。
さて、タバコ誤飲、緊急性はどうでしょうか?
誤飲した量にもよりますが、すぐに病院を受診しましょう。
子どものタバコ誤飲による致死量はタバコ半分~1本(ニコチン10-20㎎)と言われています。
…えっ、それだけで??と思いませんか?私ははじめそう感じました。
タバコはおいしくなく、胃に入っても催吐作用があり吐いてしまうのであまり大量に誤飲することは多くありません。また、タバコの葉をそのまま飲み込んだ場合はニコチンの吸収が穏やかです。ただし、タバコの吸い殻が入った水、これは超危険です。これは有名なので多くの人が知っているでしょう。
では、最近流行りの加熱式タバコ、これはどうでしょうか?通常のタバコよりも小さく、誤飲する危険は高そうです。でも小さいからニコチンの量は少ないのでしょうか?
いえ、一本に入っているニコチンの量はほぼ同じです(ものによりますが)
つまり、簡単に飲み込めて大量のニコチンを接種してしまう危険があるのです。
ニコチン中毒は治療薬がなく、基本は起こっている症状に対する対症療法しかできません。症状はめまい、発汗、嘔吐など。重症になると興奮、けいれん、昏睡、呼吸困難、徐脈、低血圧などの命の危険にさらされます。
胃洗浄は大量摂取したあと1時間以内である時のみ考慮されます。
ニコチン中毒は、タバコの誤飲後30分から症状が出始めて、2時間過ぎでニコチンの血中濃度がピークを迎えます。飲み込んだ場合は病院を受診して、2-6時間の経過観察で症状が出現しなければ帰宅となります。
食べた量が多い子や症状が出ている子は入院になります。気を付けましょう。
②ボタン電池
これも非常に多いです。
タバコよりも体に吸収されなそうだし、大丈夫かな?…なんて思わずに、夜間でも病院を受診してください!
ボタン電池が問題になるのは「食道」に引っかかってしまったときです。食道にボタン電池が引っかかると数時間で食道に穴をあけてしまいます。
特に前述のリチウム電池だと2時間以内に摘出することが求められます。
一方食道から胃に落ちてしまえば、経過観察となります。48時間経過観察した後に、まだ胃の中に残っていれば摘出。胃より先の腸に入ってしまえば経過観察となります。
病院についたらまずは診察を受け、多くはレントゲンを撮ってボタン電池が今どこにあるのかを探します。食道に引っかかっていれば専門医療機関に紹介され摘出術を、胃より下にあれば経過観察をとなります。
ただ、これもリチウム電池の場合は胃に入っている場合でも摘出の適応になることがあるので、電池を飲み込んでしまった場合にはなるべく何を飲んだのかわかるように、ケースや同じボタンが見当たれば持ってきてください。
③コイン
どうやったら飲み込むんだよ。と思うくらい大きな硬貨も平気で飲み込みます。
10円玉はもちろん、500円玉や、場合によっては記念硬貨などの大きいものまで飲み込むことがあります。
コインは基本的に毒性はありませんが、やはり長時間食道に突っかかると危険なのでレントゲンを撮って、胃より下にあればお家に帰り、うんちと一緒に出るのを待ちます。
その他
レントゲンに写るのは金属製のものだけです。プラスチックやゴム製品などはレントゲンに写りません。
以前、爪楊枝を飲み込み、腸穿孔を起こした症例を見ました。これもレントゲンには写りませんね。
基本的に尖ったもの、細長いもの以外は様子を見ることが多いです。まずは医師に相談して下さい。
おまけ 1-PICK薬について
1-PICK薬とは「one pill can kill a child」の略で、たった1錠誤飲してしまうだけで小児を死に至らしめる可能性がある薬物のことです。
恐ろしいですね。
具体的には抗精神病薬や降圧薬、抗不整脈薬や糖尿病の薬などの一部
です。詳細はご家庭で判断されるのは非常に危険なので、薬物を飲んだ時は、
「ものによってはたとえ1錠でも危険」
と認識し、病院に連れて行ってください。
最後に
最初にも書きましたが、子どもは誤飲をするものです。
こちらも仕事なので、受診してくれれば「気を付けてね」と注意をしますが、子育てしているときにほんの一瞬、目を離してしまうのは避けられないことは分かっています。
なので子どもが異物を誤飲してしまった、あるいはしてしまったかもしれない時は「怒られちゃうかも・・・」なんて思わずに、ためらわずに受診をしてくださいね。
受診する際は飲み込んだものと同じもの、あるいは片割れ、無ければ入っていた箱などを持参して下さい!
治療には少しでも情報が必要です。
では(。・ω・)ノ゙