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ドラッグの危険性。命の危険も。

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違法ドラッグのリスク

世間で違法ドラッグについて話題になっていますね。

 

「芸能界とクスリ」なんて題材の記事があったりして、何となくクスリは芸能人や一部の富裕層の遊びみたいな印象を受けた人もいるのではないかと思います。自分には関係ない、縁遠い問題であると。

しかし、現実にはドラッグというのはかなり身近な存在でそれなりの規模の病院で救急対応をしていると時折出くわす事があります。

交通事故で運ばれた人から検出されたり、街中で暴れたり倒れたりして最初から警察案件で運ばれてきたりする事もあります。

中でも印象的で、ドラッグが手軽に手に入る現代の環境とその危険性に驚いた症例がありました。

 

大きな代償を払った若年症例

 20歳代の男性、夜中に家で奇声を上げ両親が駆け付けるとけいれんを起こしているのを発見され救急要請。

病院に到着後けいれんを投薬で止め、ICU入室。JSC3桁(昏睡)であったが数時間後には意識レベルが回復し日中には会話可能に。

話を聴くとネットで海外の覚せい剤を購入し使用していたとのこと。

 

ともかく回復傾向であったので点滴、モニタ管理を継続の上ICU管理を継続とした。

しかし、午後から夕方にかけてまた徐々に意識状態が悪くなり、覚せい剤の影響が考えられた。

 

深夜一人でカルテを書いていたところ急に看護師さんが焦り始める。

「○○さん、心臓止まりそうです!」

駆け付けると確かに高度の徐脈(心臓の動きがゆっくりになること)の状態であり、救急カートを要請した次の瞬間に心停止。

 

すぐに蘇生処置に入り心臓マッサージを行うと1クールで心拍再開。ほっとしたのもつかの間、けいれん発作を起こした。

大混乱の中応援を依頼した救急科のDrとともに対応。

その後もけいれん→心停止→蘇生→けいれん

のサイクルを繰り返した。

夜中に循環器内科とともにペースメーカーを導入し心拍は維持。その後数分おきのけいれんを全身麻酔まで用いて何とか止めたのは未明のこと。

 

痙攣が続くと脳にダメージが入ることがあるので低体温療法(当時)を行ったが、意識は戻らず。その後循環は落ち着きペースメーカーは離脱できたが意識は戻らなかった。

 

…しかし慢性病院への転院も決まった約1か月後。なんと時折であるが呼び掛けにわずかに反応を示すように!

これには本当に驚いて当時の上司は数日間直接目撃できなかったため信じてもらえなかった。

リハビリも開始し徐々に機能を回復してく患者さん。そして入院から3か月後、転院先をリハビリの強い病院に変更し退院していった。

車いすに乗った患者さんが「あ、り、が、と、う…」とゆっくり言ってくれたのがとても印象的であった。

 

ネットでも買える、人生を変えてしまう薬剤

症例が長くなったが、私はこの症例で海外の覚せい剤が、こんな一般の市民が購入できてしまう身近なものになっていることに驚いた。

後に詳しい先生に聞いてみると海外の覚せい剤は安く作られるために純粋な覚せい剤ではなく、いろいろな成分が入っていることがあるとのこと。

今回飲んだ覚せい剤も成分は最後まで全く分からず、治療も対症療法にならざるを得なかった。

20代の若者が薬に手を出してしまい、死亡寸前の重篤な状況に陥り、結局は脳と体の機能にかなり重度の後遺症を残してしまった。

 

私はこの時の両親の姿を一生忘れることはないだろう。

覚せい剤は命の危険もあることを十分に認識してもらい、絶対に手を出さないようにして頂きたい。

 

ネットが普及した現代、子どもでも覚せい剤を手に入れられる可能性は全然0ではない。子どもは好奇心が強く、深刻にとらえず手を出してしまうことも十分に考えられる。大人だけの問題ではなく、子どももドラッグの脅威から守れるような管理体制が望まれる。