子どもに様々な悪影響を及ぼす肥満
前半では子どもの肥満についての疫学や、問題点についてまとめました。
後半では子どもの肥満についての対応や治療についてお話しします。
問題視されるようになった子どもの肥満
近年では肥満が小児期の生活習慣病を引き起こしたり、成人期の肥満に繋がることが知られ、各都道府県の教育委員会や医師会が対策に乗り出しています。
健康教育の機会を設けたり、啓発運動を行い、必要に応じて保険指導を行います。
また、高度肥満児は医療機関への紹介が勧められるようになっており、我々小児科医が介入をすることも増えてきました。
小児の肥満の治療目標とは?
小児の肥満の対応の難しさは、彼ら、彼女らが成長過程にあることにあります。無理な減量は栄養状態の悪化につながり、成長・発達をむしろ妨げてしまいます。
小児治療の目標は
・生活習慣病の予防
・成人期の肥満の予防
ここに重点を置き、取り組みます。
そもそも人はなぜ太るのでしょう?
答えは簡単で、消費カロリー<摂取カロリー
の状態が続くから体重が増加します。
「そんなに食べてないけど体重が増える」というのは明確な誤りです。
また、摂取カロリー以上に運動でカロリー消費をするのは至難の業です。特に、現在肥満に陥ってしまっている人がそこまで強度の高い運動が続くことはまずありません。
そのため、我々の指導もメインは食事のコントロールとなります。
もちろん運動にはカロリーを消費する目的以外にも多大なメリットがあるので、散歩やスイミングなど、普段の運動は制限せず、当然推奨します。
理想は適切な量の食事と習慣的な運動 ですが、まずは適切な食事だけでも身に着けてもらいます。
子どもの肥満治療に大切なことは?
子どもは肥満であることで健康上の問題はもちろん、自尊心の低下など精神的にも大きなデメリットを負います。そして、子どもの体格を決定付けているのは普段の食生活です。
まずは間食をやめるように指導します。下校途中や塾の前の間食は一日の摂取カロリーを飛躍的に高めます。
また、ジュースやお菓子などの過剰な摂取を改めます。全く食べるなとは言いません。毎日お母さんがおやつを準備していればそれを辞め、曜日を決めてにしましょう。
外食はカロリーが見えにくく、脂質、塩分、量などが過剰になりがちです。簡単なものでもちろんOKなので、家で食べる習慣をつけましょう。
おかずは大皿に盛っていませんか?大皿に盛るとついつい子どもたちに多くたべさせてあげがちです。子どもがどのくらい食べたのかもよくわかりません。一人一人別のお皿に分けて、きちんと1人前を食べられるようにしましょう。
子どもが栄養指導を受けているときは、ご両親、ほかの兄弟も一緒に食生活を改めましょう。一人で頑張るのは誰にとっても難しいです。
とは言っても子どもの栄養指導は厳しいカロリー制限を設けないので「普通の食事」を心がけるだけです。
1日の摂取カロリー必要量 | ||
身体活動レベルⅡ | ||
年齢(歳) | 男子 | 女子 |
6~7 | 1550 | 1450 |
8~9 | 1850 | 1700 |
10~11 | 2250 | 2100 |
12~14 | 2600 | 2400 |
15~17 | 2850 | 2300 |
↑子どもの肥満治療では、必要量のカロリーは摂取してもらいます。
普段「そんなに食べていない」という肥満の児童でも、生活指導のために入院してもらうと、ほかの子どもと同じ食事を取るだけでみるみる体重が落ちていきます。もちろんカロリー制限ではなく、普通食を食べてもらっています。
つまり、意識できていないだけで、肥満の児は普段の食生活に問題がある場合がほとんどなのです。
次いで睡眠
学童期の必要睡眠時間は実に9~11時間。思春期で8~9時間と言われています。睡眠不足は集中力や記憶力の低下だけでなく、成長を阻害し、肥満率も上げることが分かっています。
最近はスマホのやりすぎで睡眠時間が少なくなることもあるようです。夜間のスマホ利用はやめるようにしましょう。
まとめ
・おやつ、ジュースを日常的に摂取しない(たまにならOK!!)
・外食は控え、家で食べる機会を多くする。
・おかずは大皿に盛りつけず、一人一人別皿に準備する。
・可能ならば適度な運動。食事も含め、家族みんなでやると続きやすい。
子どもは成長するものなので、肥満治療の目標も無理に体重を落とすことではありません。体重がキープできれば良しとします。(そのうち身長が伸びで肥満度は改善してくる。)
家ではご家族の協力が欠かせません。
お腹が空いていると可哀そうだから、可愛いからついご褒美を。
と思っているその親心が将来の子どもに取り返しのつかない影を落とします。
可愛いからこそ、適切な食事と生活習慣を身に着け、一生の健康という大きなプレゼントを贈りましょう!
では(。・ω・)ノ゙